事業者登録制度を創設 耐震改修促進計画 懇談会に4期素案示す(県建築指導課)

[2025/10/30 栃木版]

 県建築指導課は29日、県庁で本年度第2回の建築物耐震改修促進懇談会(会長・仁田佳宏足利大学工学部教授)を開催した。同課は、現在の「県建築物耐震改修促進計画」の3期計画が本年度末で終了することから、引き続き2026年度から30年度までの5カ年を期間とする4期計画の策定を進めており、今回は素案を委員に示して意見を聴取した。素案によると、4期では住宅で事業者登録制度の創設など、防災上重要な公共建築物は防災拠点や避難所等で耐震診断の義務付けなどを盛り込む。今後は、12月にも計画案を公表してパブリックコメントを実施し、3月末もに計画策定および公表する予定としている。

 冒頭、県建築指導課の大森由香課長は「現計画の耐震化率の目標は2025年度末までに住宅が95%、多数の者が利用する建築物が概ね完了と設定しているが、それぞれ目標の達成が困難な状況であり、引き続き耐震化を推進していくことが必要」との考えを示した。

 また「4期計画素案では住宅の耐震化の強化や防災力の強化に重点を置き、新たな施策を展開していきたい。今後、懇談会やパブコメでの意見を参考に、より実効性の高い計画を策定し、住宅建築物の耐震化をより一層促進することで県民の安全で安心な暮らしの確保に努めていく」と話し、理解と協力を求めた。

 このあと議事に移り、事務局から4期計画の素案について、3期計画との変更点を中心に説明した。想定する地震は、どこでも起こりうる直下の地震として想定した「県庁直下に震源を仮定した地震」のほか、「茨城県南西部を震源とする地震」と「東京湾北部を震源とする地震」の3つを想定。地震規模はマグニチュード7.3と想定し、発災ケースは冬の深夜や冬の18時を設定する。

 建物被害・人的被害の減災効果は、県庁直下地震の建物被害として7万棟を超える被害が想定されるが、施策を実施することで2万5000棟まで減災できると想定する。建物倒壊による死者数は、対策前の3829人から、耐震化施策の実施後は2300人まで軽減できると想定する。

 対象建築物は、現行の建築基準法の耐震基準に適合しない既存耐震不適格建築物の住宅・建築物とする。対象は▽戸建て住宅▽多数の者が利用する建築物▽耐震診断義務付け建築物▽防災上重要な公共建築物▽危険なブロック塀等-とし、それぞれ施策を展開する。

 住宅・建築物の耐震化の現状は、住宅については25年度末までの目標を95%に設定していたが、見込みが92%と目標の達成が困難な状況。多数の者が利用する建築物、および耐震診断義務付け建築物は概ね解消を目標としていたが、25年度末の耐震化の見込みが95%と93%で、こちらも目標達成が困難となっている。県有建築物の特定天井は、100%の目標が達成されている。

 目標を達成できなかった主な要因は、住宅に居住する人の高齢化とともに、耐震化が必要な住宅の老朽化が進んだことが挙げられる。また、耐震化の費用の捻出が困難なことや、信頼できる事業者の分からないなどの不安から耐震改修に踏み切れなかったことが課題となっている。

 多数の者が利用する建築物は、所有者への耐震化の働きかけを十分に実施できなかったことが考えられる。耐震診断義務付け建築物は、建築物の所有者変更で耐震化の方針が変わったことや、所有者の資金力不足などで耐震改修が実施できなかったことが考えられる。

 耐震化の目標は、住宅・建築物の現状や課題、さらには国の基本方針を受けて、4期計画では住宅の耐震化率の目標を30年度末までに96%とする。多数の者が利用する建築物と要緊急安全確認大規模建築物、および防災上重要な公共建築物はそれぞれ概ね解消する目標を掲げる。緊急輸送道路沿道建築物の耐震化は早期に耐震性が不十分な建築物を概ね解消し、危険なブロック塀等の安全対策は早期の安全確保を目指す。

 耐震化の施策のうち、住宅は耐震化の促進に向けて耐震アドバイザーの派遣により、不安の解消に努める。住宅の耐震無料相談会は能登半島地震から実施した施策で、耐震化に不安をかかえる所有者に無料で相談に乗るとともに、簡易耐震診断等を実施する。新耐震住宅の所有者にも、耐震性能検証の活用を促す。

 事業者登録制度は、県が一定の基準を満たす事業者を認定登録することで、所有者が安心して改修工事を依頼できる事業者の確保を図る。また、県内事業者の技術力の向上を図るため、事業所向け講習会を開催する。さらに所有者向け講習会を実施することで、耐震化に踏み出せない所有者に対して耐震化の不安の払しょくを図る。

 各種支援制度は、23年度から耐震診断を無料化し、本年度から耐震改修の補助限度額を115万円に拡充しており、4期計画でも引き続き費用の助成を実施していく。また助成制度のほか、所有者の費用負担の軽減の取り組みを検討していく。

 建築物の耐震化の取り組みは、多数の者が利用する建築物で引き続き耐震化の普及啓発とともに、必要に応じて指導・助言を実施する。要緊急安全確認大規模建築物は、早期に耐震化を実施できるよう、引き続き助成・支援を実施するとともに、耐震化の状況の定期的な把握に努める。

 防災上重要な公共建築物は早期の耐震化を促すため、地域防災計画における防災拠点や避難所等について耐震診断の義務付けを行っていく。緊急輸送道路沿道建築物は、沿道建築物の実態把握にまで至らず効果的な普及啓発ができていなかったことから、地震発生時に閉塞を防ぐべき路線の沿道にある一定の高さにある建築物の実態を把握するとともに、耐震診断義務付け指定について検討していく。

 危険なブロック塀等の安全対策は、所有者に対し直接的な普及啓発を実施するとともに、引き続き助成・支援を行いながら安全確保を図る。

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