新規電源開発を検討 経営評価委員会 次期経営戦略の素案協議(県企業局)
[2025/11/13 栃木版]
県企業局(小林宣夫局長)は12日、2025年度第2回経営評価委員会(委員長・大森宣暁宇都宮大学地域デザイン科学部教授)を開催し、次期経営戦略の2次素案を委員に説明した。主な取り組みは、電気事業で水圧鉄管等の耐震化や施設の更新などに取り組むほか、新規電源開発を検討する。また、水道・工業水道事業は耐震診断の結果を踏まえて耐震化計画を見直す。用地造成事業は、企業ニーズに応じて区画を自由に選択できる区画パターン選択方式による予約分譲に取り組む。今後はパブリックコメントの意見も踏まえて、26年3月に経営戦略を決定・公表する。
議事に先立ち、小林局長は「本年度は、26年度から10年間を経過期間とする次期企業局経営戦略の策定年度となっている。事務局から次期経営戦略の2次素案を説明して、委員のご意見やごや提言を伺いたい」とあいさつした。
現在の県企業局経営戦略は、16年度から25年度までの10年間で計画しているが、将来にわたり安定的に事業を継続していく必要があるため、現戦略の最終年度を迎える本年度に、26年度から35年度までの10年間の新たな企業運営の指針となる次期経営戦略を策定する。なお、計画期間の中間年度の30年度に、前半5カ年の評価を踏まえて改定を行う予定としている。
企業局の経営の基本原則の「公共の福祉増進」と「企業の経済性発揮」のもと、経営方針には「安定的なサービスの提供」「経営基盤の強化」「環境や地域の貢献」「デジタル技術の活用」の4つを掲げて、各事業を推進していく。
事業別の主な取り組みをみると、電気事業は災害への備えとして、水圧鉄管など土木施設の耐震化について、これまで優先箇所で実施してきたのに引き続き、今後は生活圏外も含めすべての施設の耐震化に取り組む。施設の計画的な更新では、小網発電所の再FIT化に向けた改修工事や川治第二発電所の制御盤更新を含む分解点検、木俣・五十里両発電所の分解点検を実施していく。
カーボンニュートラル実現への貢献は、既設ダムを活用した水力発電開発の検討など、新規電源開発や新エネルギーについて継続的に調査・検討する。デジタル技術の活用では、発電所の大規模改修時に発電機軸振れ等のセンサーを設置し、現在更新中の今市発電管理事務所の集中監視制御システムに故障予測機能を導入して保安体制の構築に取り組む。
5カ年の事業面の目標は、「計画業務量(年間供給電力量)の達成」「水圧鉄管等の耐震化」「電気事業会計から一般会計への地域貢献のための繰出額」の3つを設定。「水圧鉄管等の耐震化」では、耐震診断の結果に応じて順次耐震化工事を実施し、5カ年で12カ所中11カ所まで着手する。
水道事業は、水道用水の安定供給として日常点検による施設の適切な維持管理を行い、施設の計画的な更新や耐震化では重要度・優先度を踏まえた計画的な修繕や更新、最新の知見や耐震診断の結果を踏まえた耐震化計画の見直しを行う。主な工事は、北那須の浄水施設耐震診断を26・27年度、監視制御設備更新を26-28年度に、鬼怒の送水ポンプ更新を26・27年度、送水管路耐震化を27年度以降に計画する。
デジタル技術の活用ではドローン等を活用した巡視点検で、直接目視が困難な箇所の安全かつ効率的な維持管理を行う。カーボンニュートラル実現や地域への貢献では、設備更新時に高効率機器や省エネ設備を積極導入していく。
5カ年の事業面の目標は、「計画業務量(年間供給水量)の達成」「故障等による計画外給水停止の抑制」「管路耐震適合率の向上」の3つを設定。「管路耐震適合率の向上」では、軟弱地盤に布設された管路の耐震化を行い、管路耐震化適合率を53.3%まで向上させる。
工業用水道事業も、工業用水の安定供給として日常点検による施設の適切な維持管理を行い、施設の計画的な更新や耐震化では、最新の知見や耐震診断の結果を踏まえて施設や管路の耐震化計画を見直す。主な工事は、浄水施設耐震診断を26・27年度、排水処理池制御盤更新を27・28年度、油分検出装置更新を28年度、水質計器更新を29・30年度に計画する。
用地造成事業では、選ばれる産業団地の整備として柔軟な分譲を可能とした「区画パターン選択方式」の採用などで、多様な企業ニーズに応える。デジタル技術の活用では、ICT施工や遠隔臨場などの活用により、生産性や安全性の向上を図る。5カ年の事業面の目標は、「予約販売面積(累計)」で34haの予約販売を目指す。
施設管理事業は、ゴルフ場で施設の計画的な更新を実施し、主な工事としてコース内トイレ更新を26・27年度、カート道路修繕を26-28年度、防雷シェルター更新を29年度、スタートハウス更新を30年度に計画する。
賃貸ビルも施設の計画的な更新を実施し、主な工事として外壁等改修を26・27年度、空調設備(AHU)修繕を28-30年度に実施する。また、カーボンニュートラル実現への貢献では、ESCO事業で導入した省エネ効果の高い設備を適切に運用する。
このほか、最近の企業局の動向についても委員に報告した。このうち、板室発電所(那須塩原市)の発電機が本年2月に故障して発電がストップしている件では、原因が来年度末にオーバーホールを計画していた発電機の一部破損によるものであり、売電収入を確保するため修繕して10月3日に発電を再開した。
設備の老朽化で大規模改修工事を進めてきた深山発電所は、本年10月の発電再開を予定していたが、工程の見直しにより26年4月下旬に再開を延期する。発電再開に必要な計量器の手配や据え付けに要する期間が想定よりも長期間を要して冬場にずれ込んだが、冬場は十分な河川水量が確保できないことから、本格的な試験運転の日程を再調整して約半年遅延する。
電気事業では、6つの水力発電所で発電した電力について、東京電力エナジーパートナーを売電先としてふるさと電気の取り組みを進めているが、契約期間が本年度末であり、プロポーザルで売電先を選定した結果、再度東京電力エナジーパートナーを選定した。同社から、新たなオプションの提案や売電収入の増加が見込める提案を受けているとして、引き続き電気の地産地消の推進に努めていくと説明した。
