正殿など12棟復元へ 多賀城政庁の整備方針(宮城県と有識者が協議)

[2025/11/27 宮城版]

第II期政庁のイメージ

第II期政庁のイメージ

 県は26日、第2回の多賀城政庁舎復元整備検討会を開催し、復元により目指す姿や、復元整備の内容を示し、有識者と協議した。復元整備の対象遺構は、正殿や北殿、南門など12棟と築地塀、石敷広場で、発掘調査により確認された第II期政庁(762~780年の奈良時代)の全ての遺構とした。復元整備の進め方は第1~3期に分け、段階的に進める方針を示した。有識者からは正殿を最初に整備した方がよいという意見が多く出された。

 第2回会合は県庁でウェブも併用しながら開かれた。検討会の委員は東北学院大学の櫻井一弥教授など7人が出席。県から経済商工観光部観光戦略課や教育庁文化財課の職員が出席したほか、多賀城市の職員も参加した。

 県は目指す姿として、政庁復元で歴史理解を深めるとともに、仙台・松島の中間に位置する多賀城に新たな観光スポットを創りあげることで、観光客の本県滞在時間を延ばすことと、広域周遊につなげて経済波及効果を高めることを挙げた。多賀城市が目指す姿として住み続けたい市民を増やすことなども紹介した。

 復元整備の内容については、第II期政庁の姿を再現することとし、その当時にあった全ての遺構を復元対象に設定。

 復元整備の基本方針には▽遺構の確実な保存を最優先とする▽伝統的な材料・工法を基本としつつ、安全性・耐久性等に配慮する▽段階的かつ公開性の高い整備を進める──ことなどを掲げた。

 今後のスケジュールは、本年度に整備方針をとりまとめ、来年度に県による大規模事業評価を実施するほか、地質調査などに着手する。その後、基本計画・基本設計を策定しつつ、文化庁復元委員会での審議を経て、盛土などの基盤整備や、復元建物の整備を行う予定。

 復元整備は第1期で南門、翼楼2棟、築地塀の南半分、第2期で正殿、東脇殿、西脇殿、東殿・西殿、第3期で東楼・西楼、後殿、北殿、築地塀の北半分を築造する案を示した。

 これに対して委員からは、正殿が最も中心的で象徴的な建物となるため、正殿から整備して人を呼び込めるようにした方がよいという意見が多くだされた。端の建物から整備していくと人が来なくなり途中で頓挫しかねないという声や、大きな南門を整備すると外から政庁が見えなくなってしまうという意見もあった。

 復元の過程を見せる方法には、木材の加工までを含めたデジタル設計や、3Dホログラムの活用などが提案された。設計に際して多面的な整備計画を立てることで工期やコストの圧縮が期待できるという考えも提示された。

 県教育長文化財課は、工期だけでなく途中の公開方法も含めて整備の順番を検討したいと伝えた。

 会合ではこのほか、多賀城政庁以外の周辺施設の利活用について、浮島収蔵庫や東北歴史博物館、国宝「多賀城碑」の扱いを中心に議論した。

 浮島収蔵庫に関しては、エリア全体の価値を高めるために、飲食の提供、物販、体験型サービスの提供、宿泊施設などの機能を例に上げながら活用方法を検討した。

 委員からは耐震性の問題があって人を入れての活用は難しいものの、場所が良いため、展望台を設けて敷地全体を見渡せるようにする案などが出された。

 一方で、耐震性は改修で確保できるものの、政庁方向に面していないため「向きがネックになって活用しにくい」という声も出された。

 宿泊機能については持たせた方がよいという意見と、宿泊施設への変更はハードルが高いという意見があった。いずれにしても検討の余地はあると見ている。

 来年2月10日には最終の第3回会合を開き、そこでの意見を踏まえて整備方針の報告書をとりまとめる予定だ。

※キャプション=第II期政庁のイメージ

 来年2月10日には最終の第3回会合を開き、そこでの意見を踏まえて整備方針の報告書をとりまとめる予定だ。

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